
大きな地震や断水が発生すると、自宅の便器が壊れていなくても、トイレを流せなくなることがあります。
非常用トイレを備蓄していても、箱を開けたことがなければ、袋の取り付け方や凝固剤の使い方、使用後の保管方法が分からないかもしれません。
災害が起きてから説明書を読むのは、思っている以上に大変です。
今回は30分だけ時間を取り、備蓄している非常用トイレを一つ開けて、実際に使ってみましょう。
今日の目的は、たくさん備蓄することではありません。
自宅にある非常用トイレを、家族が自分で使えるか確認することです。
最初に知っておきたいこと
地震の後は、便器や排水管に異常がないように見えても、建物の排水設備や道路の下水管が破損している可能性があります。
安全が確認できるまでは、むやみに水を流さないようにします。
集合住宅では、上の階から流した汚水が下の階であふれることもあります。管理会社や自治体から案内が出ている場合は、その指示に従ってください。
断水していなくても、排水設備の安全が分からないときは、便器に袋を取り付けて使用する非常用トイレが役立ちます。
準備するもの
今回は、実際の災害を想定して準備します。
- 携帯トイレまたは非常用トイレ1回分
- 自宅の洋式便器
- トイレットペーパー
- 使い捨て手袋
- 消毒用品
- 使用後の袋を入れる丈夫なごみ袋
- 商品の説明書
- スマートフォンまたはメモ用紙
商品によって、袋の枚数、凝固剤を入れる順番、使用方法が異なります。最初に必ず説明書を確認してください。
自宅に非常用トイレがない場合は、今回は商品の購入候補と必要数を調べるところまででも構いません。
最初の5分:箱の中身を確認する
非常用トイレを一つ取り出し、何が入っているか確認します。
一般的な商品には、次のようなものが入っています。
- 排せつ物を受ける便袋
- 水分を固める凝固剤
- 使用済みの便袋を入れる処理袋
- 使用方法の説明書
商品によっては、便器を覆うための袋や消臭剤が付属していることもあります。
次の点も確認しましょう。
- 1箱で何回使えるか
- 凝固剤の使用期限はあるか
- 凝固剤は使用前と使用後のどちらに入れるか
- 便袋と処理袋は見分けられるか
- 手袋は付属しているか
- 説明書を暗い場所でも読めるか
外箱に大きく「50回分」と書かれていても、処理袋は数枚しか入っていない商品があります。
中身を一度確認しておけば、追加で必要なものも分かります。
次の5分:便器に袋を取り付ける
便器に袋を取り付けます。
一般的な取り付け方は、次のとおりです。
- 便座を上げる
- 便器全体を大きなポリ袋で覆う
- 便座を下げる
- 便座の上から便袋を取り付ける
- 袋が便器の中へ落ちないように整える
便器を最初の袋で覆っておくと、便袋が破れた場合にも便器が汚れにくくなります。この袋は毎回交換せず、便器を保護するために残しておく方法があります。
ただし、商品の説明書に別の取り付け方が書かれている場合は、その方法を優先してください。
袋を取り付けながら、次のことも確認します。
- 袋の大きさは便器に合っているか
- 座ったときに袋がずれないか
- 袋の口をつかみやすいか
- 子どもや高齢の家族でも取り付けられるか
便器が使えない場合に備え、組み立て式の簡易便器や丈夫な箱、バケツなどを利用できるかも考えておきましょう。
次の5分:凝固剤を使ってみる
説明書に従い、凝固剤を使います。
実際に排せつして試すことに抵抗がある場合は、少量の水を使って固まり方を確認しても構いません。ただし、必要な水分量や固まるまでの時間は商品によって異なります。
確認するポイントは次のとおりです。
- 凝固剤の袋を手で開けられるか
- どの程度の時間で固まり始めるか
- 袋の中で凝固剤が偏らないか
- においはどの程度抑えられるか
- トイレットペーパーを一緒に入れても処理できるか
凝固剤を入れただけで、排せつ物が完全に見えなくなったり、においがなくなったりするとは限りません。
実際に試すことで、「思っていたより袋が薄い」「凝固剤の袋を開けにくい」「もう一枚ごみ袋が必要」といったことが分かります。
こうした気づきこそ、今回の実践で得たい情報です。
次の5分:袋を閉じて保管方法を確認する
使用後を想定し、便袋の中の空気をできるだけ抜いて、口をしっかり結びます。
強く押して空気を抜くと、袋が破れたり、中身が飛び出したりする可能性があります。無理に押さえ込まず、丁寧に扱いましょう。
便袋は、さらに丈夫なごみ袋や防臭袋へ入れます。
次の点を確認してください。
- 袋の口を確実に結べるか
- 液体が漏れていないか
- 二重にできる袋があるか
- 使用済みの袋を置く場所があるか
- 子どもやペットが触れないようにできるか
- 雨や直射日光を避けられるか
災害時には、ごみの収集がすぐに再開されるとは限りません。
家族が1週間使用すると、かなりの量になります。ベランダなどに置く場合も、避難経路をふさいだり、強風で飛ばされたりしない場所を選びます。
使用済み携帯トイレの分別方法や収集方法は、自治体によって異なります。災害時に自治体から発表される案内に従い、平常時の判断だけで通常のごみへ出さないようにしましょう。
次の5分:衛生面を確認する
非常用トイレを使った後は、手袋を外し、手を洗います。
断水で水が使えない場合に備え、次のものもトイレ用品と一緒に保管しておきましょう。
- 使い捨て手袋
- 手指消毒剤
- ウェットティッシュ
- トイレットペーパー
- 防臭袋
- 大きめのごみ袋
- 消臭剤
- マスク
手袋を使っていても、袋の表面や便座に触れた可能性があります。手袋を外した後の手指衛生も必要です。
トイレを我慢して水分を控えると、体調を崩す原因になります。
「使い方が分からない」「においが心配」という理由でトイレを我慢しなくて済むよう、平常時に準備しておくことが大切です。
最後の5分:家族に説明する
試して分かったことを、家族にも伝えます。
少なくとも、次の内容を共有しましょう。
- 地震の後は、すぐにトイレの水を流さない
- 非常用トイレの保管場所
- 便袋の取り付け方
- 凝固剤を入れる順番
- 使用後の袋を置く場所
- 手袋や消毒用品の場所
家族にも実際に袋を取り付けてもらうと、説明を聞くだけでは分からなかった問題が見つかります。
特に、子ども、高齢者、障害のある人がいる家庭では、一人で使用できるか確認してください。夜間を想定し、照明がない状態でも準備できるか考えておくことも必要です。
家族に必要な回数を計算する
政府の案内では、携帯トイレは一人当たり1日5~6回程度、7日分の備蓄が目安として示されています。
1日5回で計算すると、一人当たり1週間で35回分です。
例えば、家族4人なら次のようになります。
5回×4人×7日=140回分
箱に書かれた回数だけでなく、家族全員で何日使えるかを計算しましょう。
乳幼児、高齢者、持病のある人などがいる場合は、家庭の状況に応じて余裕を持たせます。
あわせて、便袋と同じ数の凝固剤があるか、処理用の袋や手袋が十分かも確認してください。
試して分かったことを記録する
実践が終わったら、次の内容を記録します。
- 試した日
- 商品名
- 取り付けやすかったか
- 凝固剤を入れる順番
- 固まるまでにかかった時間
- 袋の閉じやすさ
- においへの対策
- 不足していた用品
- 家族に必要な備蓄数
例えば、次のようにまとめます。
- 凝固剤の袋が開けにくかったので、はさみを一緒に保管する
- 防臭袋が不足しているので追加する
- 夜間用にトイレ付近へライトを置く
一度試すだけで、買い足すべきものが具体的になります。
今日の防災士活動
非常用トイレを一つ開け、取り付けから使用後の保管まで確認することも、防災士としてできる実践活動です。
箱を持っていることと、実際に使えることは同じではありません。
試した結果を家族に伝えれば、家庭内の防災力を高められます。難しかった点や改善したことは、地域や知人へ伝える際にも役立ちます。
防災士は、一人でも活動できる。
まずは今日、非常用トイレを一つ開けて、説明書を読むところから始めてみましょう。
参考資料・公的情報
関連記事
防災士 森本たかし(京都府舞鶴市)


