
地震や大雨が起きたとき、避難場所の名称を知っているだけでは、迷わず安全にたどり着けるとは限りません。
普段通っている道路でも、災害時にはブロック塀が倒れたり、道路が冠水したり、橋や地下道を通れなくなったりすることがあります。
夜間や停電時には、いつもの目印が見えなくなるかもしれません。
今回は、自宅から避難場所までの経路を実際に歩き、危険な場所と別の経路を確認してみましょう。
今日の目的は、最短距離を見つけることではありません。
災害の種類に合った避難先と、安全に歩ける経路を確認することです。
最初に知っておきたい「避難場所」と「避難所」の違い
避難先を確認するときは、「指定緊急避難場所」と「指定避難所」の違いを知っておく必要があります。
指定緊急避難場所
洪水、土砂災害、津波、地震、大規模な火事などの危険から、命を守るために緊急的に避難する場所です。
対応している災害の種類は、場所ごとに異なります。
例えば、地震の避難場所として指定されている公園でも、洪水時には浸水する可能性があります。
指定避難所
災害で自宅へ戻れなくなった人などが、一定期間滞在するための施設です。学校の体育館や公民館などが指定されている場合があります。
同じ施設が指定緊急避難場所と指定避難所を兼ねていることもありますが、役割は同じではありません。
「近くの学校だから、どの災害でも安全」とは限りません。自治体のハザードマップで、災害の種類ごとに確認してください。
準備するもの
歩き始める前に、次のものを準備します。
- 自治体のハザードマップ
- スマートフォンまたは紙の地図
- メモ用紙
- 筆記用具
- 歩きやすい靴
- 飲み物
- 必要に応じて帽子や雨具
- 普段使用している眼鏡や杖
- 小さな非常持出袋
スマートフォンだけに頼ると、停電や通信障害、電池切れの際に地図を確認できないことがあります。
可能であれば、避難先と経路を記入した紙の地図も用意しましょう。
大雨警報や避難情報が出ているとき、河川が増水しているとき、津波や土砂災害の危険があるときに、点検のため外へ出てはいけません。
この活動は、天候が安定している平常時に行います。
最初の5分:災害の種類と避難先を確認する
まず、自宅周辺で想定されている災害を確認します。
- 洪水
- 内水氾濫
- 高潮
- 津波
- 土砂災害
- 地震
- 大規模な火災
- 火山災害
自治体のハザードマップや、国土地理院のハザードマップポータルサイトを使い、自宅と周辺道路の危険を調べます。
次に、災害の種類ごとに避難先を確認します。
例えば、次のように整理します。
- 地震の場合:近くの指定緊急避難場所
- 洪水の場合:浸水区域外の親戚宅や指定緊急避難場所
- 津波の場合:高台または津波避難ビル
- 自宅で生活できない場合:開設された指定避難所
避難とは、必ずしも避難所へ行くことだけではありません。
自宅に危険がなく、安全を確保できる場合は、その場にとどまることもあります。安全な地域に住む親戚や知人の家、宿泊施設などへ避難する方法もあります。
大切なのは、災害が起きてから避難先を考えるのではなく、平常時に複数の選択肢を決めておくことです。
次の10分:第一の経路を歩く
自宅から避難場所まで、普段選びそうな経路を歩きます。
地図上では近く見えても、実際には坂道や階段があったり、交通量の多い道路を横断したりする場合があります。
歩きながら、次の場所を確認しましょう。
- 古いブロック塀
- 石垣や擁壁
- 瓦や看板が落下しそうな建物
- ガラスの多い建物
- 狭い路地
- 自動販売機
- 電柱や電線
- 工事現場
- 崖や急斜面
- 河川や水路
- 橋
- 地下道やアンダーパス
- 踏切
- 道路沿いの大きな樹木
- 倒壊すると道路をふさぎそうな建物
大きな地震の後は、ブロック塀や建物の近くを歩くことが危険になる場合があります。
洪水時には、川沿いの道路や低い土地、地下道を通る経路を避ける必要があります。道路が冠水すると、側溝やふたの外れたマンホールが見えなくなることもあります。
津波から避難する場合は、海岸や川から離れ、より高い場所へ向かうことが基本です。最短経路より、標高と避難にかかる時間を優先します。
歩きながら危険な場所を地図へ記入し、必要に応じて写真も撮っておきましょう。
避難にかかる時間を測る
自宅を出てから避難場所へ着くまでの時間を測ります。
ただし、普段の速さだけで判断しないようにします。
災害時には、次のような理由で時間がかかります。
- 停電で周囲が暗い
- 道路に物が散乱している
- 多くの人が同時に避難する
- 雨や強風で歩きにくい
- 子どもや高齢者と一緒に避難する
- 非常持出袋を持っている
- 通行できない道を迂回する
- エレベーターを使えない
可能であれば、実際に持ち出す予定の荷物を背負って歩いてみます。
乳幼児を連れて避難する家庭では、抱っこひもやベビーカーのどちらを使うかも確認してください。道路の段差やがれきによって、ベビーカーを使えない可能性もあります。
高齢者や障害のある家族がいる場合は、本人と一緒に無理のない範囲で歩き、必要な支援と所要時間を確かめます。
次の5分:避難場所の表示を確認する
避難場所へ着いたら、施設名だけでなく、表示や周囲の状況を確認します。
- 指定緊急避難場所の標識があるか
- どの災害に対応しているか
- 出入口はどこか
- 夜間でも入口を見つけられるか
- 階段や段差があるか
- 車椅子で利用できる経路があるか
- 門が閉まっている場合はどうするか
- 津波避難ビルの場合、避難できる階や場所はどこか
- 施設まで誘導する標識があるか
- 周囲に別の危険がないか
平常時に門や建物が閉まっていても、勝手に乗り越えたり、許可なく敷地へ入ったりしてはいけません。
自治体の防災担当窓口や施設の案内で、災害時の開設方法や入口を確認しましょう。
避難所は、災害が起きればすべて自動的に開設されるとは限りません。避難するときは、自治体のウェブサイト、防災無線、防災アプリ、ラジオなどで開設状況を確認します。
次の10分:第二の経路を確認する
帰りは、できるだけ別の経路を歩きます。
第一の経路が火災、倒壊、冠水、通行止めなどで使えなくなる可能性があるためです。
第二の経路では、次の点を確認します。
- 第一の経路と同じ橋を通らずに済むか
- 河川や崖から離れられるか
- 道幅は十分にあるか
- 夜間でも方向を確認できるか
- 通行止めになった場合に迂回できるか
- 子どもや高齢者も歩けるか
- 車を使わなくても移動できるか
避難場所までの経路が一つしかない場合は、別の避難先も検討します。
「避難場所は一つ、経路も一つ」では、その経路が使えなくなったときに動けなくなります。
第一避難先、第二避難先、第一経路、第二経路を組み合わせて考えましょう。
夜間の状況を想像する
昼間に安全に歩けた道でも、夜間や停電時には状況が変わります。
次の点を確認してください。
- 街灯が消えても方向が分かるか
- 懐中電灯を持って歩けるか
- 段差や側溝がないか
- 避難場所の表示を見つけられるか
- 子どもが一人でも場所を説明できるか
- 建物名以外の目印があるか
安全に実施できる地域であれば、別の日に家族と夜間の経路を歩いてみる方法もあります。
ただし、暗い道を一人で歩くこと自体に防犯上の危険がある場合は、昼間の確認にとどめます。
車での避難を前提にしない
地域や災害の状況によっては、車での避難が必要になる場合もあります。
一方で、多くの人が同時に車を使うと、渋滞が発生して避難が遅れる可能性があります。道路の損傷や冠水、放置車両によって通行できなくなることもあります。
徒歩避難を原則としている地域や、津波からの避難で車の使用にルールを設けている地域もあります。
自治体の地域防災計画や避難方法を確認し、自己判断だけで車を使わないようにしましょう。
徒歩で避難することが難しい家族がいる場合は、地域の避難支援や個別避難計画について自治体へ相談してください。
歩いて分かったことを記録する
自宅へ戻ったら、確認した内容をまとめます。
- 歩いた日
- 想定した災害
- 第一避難先
- 第二避難先
- 第一経路
- 第二経路
- 避難にかかった時間
- 危険だった場所
- 夜間に見えにくい場所
- 通行できない場合の迂回路
- 家族に必要な支援
- 自治体へ確認すること
例えば、次のように記録します。
- 最短経路には古いブロック塀があるため、広い道路を通る
- 洪水時は川沿いの道を使わない
- 避難場所の入口が分かりにくいため、家族で写真を共有する
- 子どもと歩くと15分かかったため、避難開始を早める
- 第二経路にも同じ橋があるため、別の避難先を調べる
地図へ危険箇所と経路を書き込み、玄関や非常持出袋の近くに保管しておくと、災害時に確認しやすくなります。
家族へ説明する
確認した経路は、自分だけが知っていても十分ではありません。
家族に次の質問をしてみましょう。
- 地震のときは、どこへ避難する?
- 洪水のときも同じ場所でよい?
- 第一の経路が通れなければ、どの道を使う?
- 家族が別々の場所にいる場合はどうする?
- 避難所が開設されているか、何で確認する?
- 非常持出袋はどこにある?
家族全員が同じ地図を見ながら確認すると、思い込みや認識の違いを見つけられます。
避難場所や道路の状況は変わることがあります。新しい建物ができたとき、道路工事が始まったとき、自治体のハザードマップが更新されたときにも見直しましょう。
今日の防災士活動
自宅から避難場所まで実際に歩き、危険な場所と別の経路を確認することも、防災士としてできる具体的な活動です。
歩いて初めて気づく段差、坂道、狭い道路、見えにくい標識があります。
自宅周辺で見つけた危険は、家族だけでなく、自治会や地域の防災活動でも共有できます。
防災士は、一人でも活動できる。
まずは今日、ハザードマップを開き、自宅から避難場所までの経路を一本指でたどってみましょう。
参考資料・公的情報
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防災士 森本たかし(京都府舞鶴市)

